椽先ゑんさき)” の例文
父は間もなく用事が出来て行つてしまひ、私も子供心にうれひを長く覚えては居ず、椽先ゑんさき手鞠てまりをついて居り升た。
黄金機会 (新字旧仮名) / 若松賤子(著)
通らでも事は済めども言はば近道の土手々前どてでまへに、仮初かりそめ格子門かうしもん、のぞけば鞍馬くらま石燈籠いしどうろはぎ袖垣そでがきしをらしう見えて、椽先ゑんさきに巻きたるすだれのさまもなつかしう
たけくらべ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
貸金の取たて、店への見廻り、法用のあれこれ、月の幾日いくかは説教日の定めもあり帳面くるやら経よむやらかくては身躰からだのつづき難しと夕暮れの椽先ゑんさきに花むしろを敷かせ
たけくらべ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
といつて、私を椽先ゑんさきまで手を引いて行き、そばすわらせ柔和に私のうれひもといを問ふてくれた父に私は心をすつかり打あけて、どうぞ決心のよく守れる仕方を教へてと頼み升た。
黄金機会 (新字旧仮名) / 若松賤子(著)
跡より続いて椽先ゑんさきからそつと上るを、母親見るより、おお正太さん宜く来て下さつた、今朝から美登利の機嫌が悪くて皆なあぐねて困つてゐます、遊んでやつて下されと言ふに
たけくらべ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)