案配あんばい)” の例文
大急ぎで十五円八十銭を送っていただきたいというような案配あんばいであった。そのつぎにおのれの近況のそれも些々ささたる茶飯事を告げる。
ロマネスク (新字新仮名) / 太宰治(著)
「そりゃ好い案配あんばいだ。亭主が自分でクッキングをやるんだから、ほかよりゃ少しはましかも知れない」
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
愛子はすすけた障子しょうじの陰で手回りの荷物を取り出して案配あんばいした。口少くちずくなの愛子は姉を慰めるような言葉も出さなかった。外部が騒々そうぞうしいだけに部屋の中はなおさらひっそりと思われた。
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
一年いちねん取前高とりまへだかはみんな札差がとつてしまつて、諸拂にと少しばかりわたされるので困つてねだりにゆくといつた案配あんばいで、どつちが出入りなのだかわからなくなつてしまつて、お金も米も
花火と大川端 (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
いい案配あんばいに、竹やが、電話を聞いていた。そして証人になってくれた。極めて近距離から発射されたピストルだが、その時お前は、電話口にいたというのだから、当然、嫌疑からは免れてしまう。
偽悪病患者 (新字新仮名) / 大下宇陀児(著)
そした案配あんばいこ、おたがい野火をしへだて、わらわ、ふた組にわかれていたずおん。かたかたの五六人、声をしそろえて歌ったずおん。
雀こ (新字新仮名) / 太宰治(著)
「さっきの、幼年時代をお書きになる時、子供の心になり切る事も、むずかしいでしょうし、やはり作者としての大人の心も案配あんばいされていると思うのですが。」
みみずく通信 (新字新仮名) / 太宰治(著)
そんなとき両者を比較して多少の興を覚えるように案配あんばいしたわけである、などと、これではまるで大道の薬売りの口上にまさる露骨な広告だ。もう、やめる。さすがの鉄仮面も熱くなって来た。
鉄面皮 (新字新仮名) / 太宰治(著)
こんな案配あんばいじゃ、王子さまは、お前に死なれたら後を追って死ぬかも知れんよ。まあ、とにかく、王子さまの為にも、もう一度、丈夫になってみるがよい。それからの事は、またその時の事さ。
ろまん灯籠 (新字新仮名) / 太宰治(著)
以下は、勿論、芸術家が直接に見て知ったことでは無く、さまざまの人達から少しずつ聞いたところのものを綜合して、それに自分の空想をもたくみに案配あんばいして綴った、わば説明の文章であります。
女の決闘 (新字新仮名) / 太宰治(著)