枯柳かれやなぎ)” の例文
二十分ののち、村の南端の路ばたには、この二人の支那人が、互に辮髪べんぱつを結ばれたまま、枯柳かれやなぎの根がたに坐っていた。
将軍 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
茶屋町の横丁はもうかた日影で、雷門かみなりもんの通りからチラホラと曲がる人かげも、そこに縁なき男どもばかりで、枯柳かれやなぎがまい込むほか、午後になって賽銭さいせんの音もせず、店はいたって閑散な日。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
つんと横を向いたが、たちまち白い手で袖下をすくって、「ウシ、ウシ、ウシウシ。」もののたとえにさえ云う……枯柳かれやなぎの川端を、のそのそと来た野良犬を、何と、佐川田喜六の蛙以上に可恐おそろしがる
卵塔場の天女 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
しかしそのほかにも画面の景色は、——雪の積った城楼じょうろうの屋根だの、枯柳かれやなぎつないだ兎馬うさぎうまだの、辮髪べんぱつを垂れた支那兵だのは、特に彼女を動かすべき理由も持っていたのだった。
奇怪な再会 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)