枡屋ますや)” の例文
伝吉はたちまち枡屋ますやわれ、唐丸とうまるまつと称された博徒松五郎まつごろう乾児こぶんになった。爾来じらいほとんど二十年ばかりは無頼ぶらいの生活を送っていたらしい。
伝吉の敵打ち (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「うん、角屋の前に枡屋ますやという宿屋があるだろう。あの表二階をかりて、障子しょうじへ穴をあけて、見ているのさ」
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そのほかには御用商人の大橋屋茂兵衛が、夜になってから枡屋ますや和助といっしょにやって来た。
改訂御定法 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
山嵐はいよいよ辞表を出して、職員一同に告別の挨拶あいさつをしてはまの港屋までさがったが、人に知れないように引き返して、温泉の町の枡屋ますやの表二階へひそんで、障子しょうじへ穴をあけてのぞき出した。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「一石橋の枡屋ますやへいったか」
ちいさこべ (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
その玉子を四つずつ左右のたもとへ入れて、例の赤手拭あかてぬぐいかたへ乗せて、懐手ふところでをしながら、枡屋ますや楷子段はしごだんを登って山嵐の座敷ざしきの障子をあけると、おい有望有望と韋駄天いだてんのような顔は急に活気をていした。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)