枝折門しおりもん)” の例文
空には月が出てみちぶちには蛍が飛んでいた。其処に唐茄子とうなすを軒にわした家があって、栗丸太の枝折門しおりもんの口には七夕たなばたの短冊竹をたててあった。
南北の東海道四谷怪談 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
二三間小戻りすると枝折門しおりもんがあり、押せばすぐ開くところを見ると、先刻尼を見失ったのは、多分此辺だったのでしょう。
百唇の譜 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
今は職人の数も少かった。そして幾分不用になった空地あきちは庭に作られて、洒落しゃれ枝折門しおりもんなどがしつらわれ、石や庭木が多く植え込まれた。住居すまいの方もあちこち手入をされた。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
向うに見える、庭口から巣鴨の通へ出ようとする枝折門しおりもんに、きつけた腕車くるまわきに、栗梅のお召縮緬めしちりめん吾妻あずまコオトを着て……いや、着ながらでさ、……立っていたのがお夏さんでね。
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)