東照宮とうしょうぐう)” の例文
午頃ひるごろまで長吉は東照宮とうしょうぐうの裏手の森の中で、捨石すていしの上によこたわりながら、こんな事を考えつづけたあとは、つつみの中にかくした小説本を取出して読みふけった。
すみだ川 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
東照宮とうしょうぐうの前では、女学生がはでな蝙蝠傘こうもりがさをさして歩いていた。パノラマには、古ぼけた日清戦争の画かなんかがかかっていて、札番が退屈そうにあくびをしていた。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
そこには、東照宮とうしょうぐうがあって、五重の塔が、黒い怪物のようにそびえています。
鉄人Q (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
風のない夕暮れなどには苔香園の表門を抜けて、紅葉館前のだらだら坂を東照宮とうしょうぐうのほうまで散歩するような事もあった。冬の夕方の事とて人通りはまれで二人がさまよう道としてはこの上もなかった。
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
このゆうべ、私は親しくオイケンの哲学に関する先生の感想をうかがって、も九時過再び千駄木の崖道をば根津権現ねづごんげんの方へり、不忍池しのばずのいけうしろを廻ると、ここにもそびえ立つ東照宮とうしょうぐうの裏手一面の崖に
翌日あくるひ自分は昨夜ゆうべ降りた三門前で再び電車を乗りすて、先ず順次に一番はずれなる七代将軍の霊廟から、中央にある六代将軍、最後に増上寺を隔てて東照宮とうしょうぐうに隣りする二代将軍の霊廟を参拝したのである。
霊廟 (新字新仮名) / 永井荷風(著)