木端微塵こっぱみじん)” の例文
善良なる村の紳士淑女も、秀才も、よだれくりも、木端微塵こっぱみじんでありました。周章狼狽しゅうしょうろうばい、右往左往に逃げ散ります、蜘蛛くもの子を散らすが如く。
大菩薩峠:29 年魚市の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
たちま轟音ごうおんとともに自動車が猛煙につつまれた。人々はことごとく木端微塵こっぱみじんになっている。それなのに、彼だけがひとり不思議に助かっている。
冬日記 (新字新仮名) / 原民喜(著)
木端微塵こっぱみじん砕き尽されなければならない。砕けた瓦が更に堅い瓦となるためには、一切の色彩を剥がれ、有らゆる外殻を破って、以前の粘土に帰らなければならない。
敵策謀の本拠白堊館が大統領もろとも木端微塵こっぱみじんとなって飛び散る日が、間もなくやって来るのです。
偉大なる夢 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
見ろ。向うにある真っ黒なのは焔硝樽えんしょうだるだ。あの中に投り込めば、俺もお前も、この物置も、木端微塵こっぱみじんに吹き飛ばされた上、百樽の毒薬は、神田上水の大樋おおどいの中に流れ込むぞ——
「はあ。吉川君、木端微塵こっぱみじんになって、すっ飛んでしまいますよ」
求婚三銃士 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
おっこったらはあ、木端微塵こっぱみじんになっちまうわ
禰宜様宮田 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
あえて正面衝突も、木端微塵こっぱみじんも辞することなき、無謀千万の行き方でやって来るものですから、こちらの船頭が、火のついたように地団太を踏んで
アハハハ——、爆薬なんか使ったら、わし達が木端微塵こっぱみじんじゃ。マアよく考えて見給え。ここを抜け出す唯一の手段は、わし達が落ちて来たあの天井の陥穽おとしあなの蓋を開くことじゃ。
妖虫 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
いずれは木端微塵こっぱみじんに吹き飛ばされる加州の身の上と知らないのか、——ざまア見やがれ
天保の飛行術 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
みんなどうして生きて行っているのかまるで僕には見当がつかない。みんな人間は木端微塵こっぱみじんにされたガラスのようだ。世界は割れている。人類よ、人類よ、人類よ。僕は理解できない。
鎮魂歌 (新字新仮名) / 原民喜(著)
言わない、——どうしても言わない、私達をこんな羽目におとし込んだのはお前だろう。——その代りお前の名前を譫言うわごとに言っているあの娘は、この御殿と一緒に木端微塵こっぱみじんに砕け散るよ。
幕府の兵隊を木端微塵こっぱみじんにやっつけてしまうというじゃねえか、戦争にならねえ、江戸の方は戦争したって勝つ見込みはねえ、ただ何とかして体裁を作って、早く引上げてえだけの話だってじゃねえか
大菩薩峠:38 農奴の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)