木槿垣むくげがき)” の例文
余所よそながら姉上の姿見ばやと思いて、木槿垣むくげがきの有りしあとと思うあたりを、そぞろ歩行あるきして、立ちて、伺いしその暮方なりき。
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
だん/\進んで行くと、突當りの木槿垣むくげがきの下に、山のはなれた許りの大滿月位な、シッポリと露を帶びた雪白の玉菜キャベーヂが、六個むつ七個なゝつ並んで居た。
葬列 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
ちょうど木槿垣むくげがきを一重隔てて南隣りは沈澱組ちんでんぐみの頭領が下宿しているんだから剣呑けんのんだあね
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
はらら来て雀れゆく木槿垣むくげがき風か立ちたる花のうごくは (九九頁)
文庫版『雀の卵』覚書 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
かかりし少年の腕力あり門閥ある頭領を得たるなれば、何とて我威をふるわざるべき。姉上に逢わむとて木槿垣むくげがきみち、まず一人物干棹をもて一文字に遮りとどむ。
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
いなこれは、東雲の光だけではない、置き餘る露のたまが東雲の光と冷かな接吻くちづけをして居たのだ。此野菜畑の突當りが、一重ひとへ木槿垣むくげがきによつて、新山堂の正一位樣と背中合せになつて居る。
葬列 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
はらはらと雀飛び木槿垣むくげがきふと見ればすずし白き花二つ
雀の卵 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
この境内とその庭とを、広岡の継母は一重ひとえ木槿垣むくげがきをもて隔てたり。
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)