朝来ちょうらい)” の例文
旧字:朝來
だが朝来ちょうらいの天候は不穏ふおんをつげ、黒雲が矢のようにとび、旋風せんぷうが林をたわめてものすごいうなりを伝える。と見るまに大粒おおつぶの雨が落ちてきた。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
朝来ちょうらいからの猛烈な温気が、水銀柱を見る見る三十四度にあげ、午後三時というのに、早くも漆を溶かしたような黒雲は、甲州連山の間から顔を出し
(新字新仮名) / 海野十三(著)
惣八郎は手に立ちそうな相手を選んでは、ぎ倒した。甚兵衛は、朝来ちょうらい惣八郎の手柄を見て歩いた。
恩を返す話 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
朝来ちょうらいひるを過ぎても、諸方から麾下きかに集まって来る兵は相当あったが、いずれも近畿の小武門や浪牢ろうろうの徒で、いわば、名もなきやからが出世のいとぐちを求めて来るに過ぎなかった。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
余は奥座敷で朝来ちょうらいの仕事をつゞける。寒いので、しば/\火鉢ひばちすみをつぐ。障子がやゝかげって、丁度ちょうど好い程のあかりになった。さあと云う音がする。ごうと云うひびきがする。風が出たらしい。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
病室寒暖計六十二度、昨日は朝来ちょうらい引き続きて来客あり夜寝時に至りしため墨汁一滴をしたたむる能はず、因つて今朝つくらんと思ひしも疲れて出来ず。新聞も多くは読まず。やがてわずかに睡気を催す。
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)