有職故実ゆうそくこじつ)” の例文
和学講談所(主として有職故実ゆうそくこじつを調査する所)のはなわ次郎という学者はひそかに安藤対馬の命を奉じて北条ほうじょう氏廃帝の旧例を調査しているが
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
以上述べたような項目の外に著しく多数に散在しているのは有職故実ゆうそくこじつその他あらゆる知識に関するノートと云ったものである。
徒然草の鑑賞 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
高家筆頭こうけひっとうとして、公卿堂上の取次ぎ、神仏の代参、天奏衆上下の古礼、その他有職故実ゆうそくこじつに通じている吉良だった。
元禄十三年 (新字新仮名) / 林不忘(著)
団十郎がなぜこんな会を作り出したかというと、それはの“活歴かつれき”を作り出す準備で、彼はその会員を顧問として、有職故実ゆうそくこじつを研究しようと企てたのである。
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
学を藤原惺窩せいかの門に受け、和歌、点茶、有職故実ゆうそくこじつの類いも、充分父の衣鉢いはつを継ぎ得ていたのである。
随筆 宮本武蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
有職故実ゆうそくこじつのことは申すまでもなく、一般美術のことに精通しておられ、自ら絵画をも描かれた位でありますから、建築内部の設計装飾等の万般について計画をしておられまして
有職故実ゆうそくこじつ諸礼作法をもって鳴る名家の主が、いかに貧ゆえの苦しみからとはいいながら、上お将軍家からのお預かり物を、しかも保管料三百金というお慈悲付きのお預かり物を
念の為め主人と私の関係を話して置くと、私の父は幼時に維新の匆騒そうそうを越えて来たアマチュアの有職故実ゆうそくこじつ家であったが、斯道しどうに熱心で、研究の手傅てだすけのため一人娘の私に絵画を習わせた。
東海道五十三次 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
嘘でも袖を丸くして、長い著物にしてもらわなければ工合が悪いのです。芝居というものはイリュージョンを破りさえしなければいいので、何も有職故実ゆうそくこじつをおぼえに来るところじゃない。
久保田米斎君の思い出 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)