おそ)” の例文
六年前に来た時、例の汚い宿で、金鱗湖のこいは名物であるから見て来いと勧められて、夜おそくなって見に行ったことがあった。
由布院行 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
おそくまで居残ってそこの台所で吸物の味加減をなおしたり酒のかんの手伝いをしたりした揚句、祝儀袋を貰って外へ出ると皎々たる月夜だった。
放浪 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
楠は夜おそくなつて濟まなかつた事や、本を貸して呉れた事の禮やらを今夜は殊に丁寧に小さな聲で云つて歸つて行つた。相島は楠が返してよこした書物三四册を抱へて書齋に這入つて來た。
半日 (旧字旧仮名) / 有島武郎(著)