“曠(むなし)” の例文
しかし第一の「徳川家康篇」だけは幸ひにも未成品に畢(をは)つてゐない。いや僕の信ずる所によれば、寧ろ前人を曠(むなし)うした、戞々(かつかつ)たる独造底(どくざうてい)の完成品である。
大久保湖州 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
己はかう思つたのである。己は長い間留守を明けてゐた。長い間君に背いて交情を曠(むなし)うしてゐた。
復讐 (新字旧仮名) / アンリ・ド・レニエ(著)
かゝる文壇の慈氏(みろく)、詞場のメシヤスは果していつか出現すべき。獨逸にレツシングといふものありき。彼は筆戰の間に名を成して、屍(かばね)を馬革に裹(つゝ)まむの志を曠(むなし)うせざりき。
柵草紙の山房論文 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
お前はゆうべも職を曠(むなし)ゅうしなかった。
神の泉の霊験を曠(むなし)くせぬようになさい。