暗渠あんきょ)” の例文
銅の雨樋から落ちた水が、御影みかげで畳んだ見事な暗渠あんきょの中にチョロチョロと落ちて行くのを見て、平次は思わず歓声を挙げたのです。
古本屋の店は、山谷堀さんやぼりの流が地下の暗渠あんきょに接続するあたりから、大門前おおもんまえ日本堤橋にほんづつみばしのたもとへ出ようとする薄暗い裏通に在る。
濹東綺譚 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
このへん一帯をおおうているてしもない雑木林の間の空地に出てから間もない処に在る小川の暗渠あんきょの上で、ほとんど干上ひあがりかかった鉄気水かなけみずの流れが
木魂 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
やがて石神井川が飛鳥あすか山と王子台との間に活路をひらいて落ちるようになって、不忍池しのばずのいけの上は藍染あいぞめ川の細い流れとなり、不忍池の下は暗渠あんきょにされてしまって
河明り (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
その代りともみられた千束堀(その大溝にそうした名称のついていたことをつい最近までわたしは知らなかった)も覆蓋ふくがい工事が施されて暗渠あんきょになったいまでは、そこはただ
浅草風土記 (新字新仮名) / 久保田万太郎(著)
大都市は、海にむかって漏泄ろうせつの道をひらいている。その大暗渠あんきょは、社会の穢粕かす疲憊ひはいとを吸いこんでゆく。その汚水は、都市の秘密、腐敗、醜悪を湛えてまんまんと海に吐きだす。
地虫 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
平次の言葉を待つまでもなく、石臼の下には一枚板があって、それを挙げると、その下は大きな木の暗渠あんきょ——昔は坂上の水を引いたろうと思うようなのが現れました。