晒木綿さらし)” の例文
去定はすばやく手当を済ませ、裸の男が板切れを持って来ると、登に晒木綿さらしを裂かせて、二人の折れた腕に副木そえぎを当ててやった。
継母のおまんは半蔵のために青地あおじにしきの守り袋を縫い、妻のお民は晒木綿さらしの胴巻きなぞを縫ったが、それを見る半蔵の胸にはなんとなく前途の思いがおごそかに迫って来た。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
さぶはのろくさした手つきで包みを解き、晒木綿さらしを切った下帯の束をこっちへ置き、三つの折詰を持って部屋の中を見まわした。
さぶ (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
栄二は又左衛門に対しても沈黙を守った。仮牢で暴れたとき、右足の拇指おやゆびの爪をがし、手当てをされて晒木綿さらしで巻いてある。
さぶ (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
病人置場から出て来た才次は、口から上を晒木綿さらしで巻き、眼のところだけあけてある穴から、栄二を絶えず睨んでいた。
さぶ (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
おけいが湯呑を取ろうとし、登は「きれいな晒木綿さらしを」と云った。毒物を吐くときにのどただれさせているし、もうごくりと飲む力はないと思ったのだ。
赤ひげ診療譚:06 鶯ばか (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
晒木綿さらしで巻いているが、そうするよりほかになかった、まるでけもののように狂いたっていたからだ、この手を見ろ
どちらも若く、一人は双肌もろはだぬぎ、一人はふんどしに白い晒木綿さらしの腹巻だけで、その裸の男のほうが去定に呼びかけた。
そこは八帖ばかりの広さで、光るほど拭きこんだ板敷の上に薄縁うすべりが敷かれ、——それは白い晒木綿さらしおおわれていたが、女の裸の躯はその上へ仰向けに寝かされてあったのだ。
おたねは十九という年よりふけてみえるし、気性もしっかりしているらしく、頭を晒木綿さらしで巻かれた角三を見ても、とり乱したようすは少しもなく、去定の話すことをおちついて聞いていた。