時世じせい)” の例文
吉兵衛の腑甲斐ふがいなさばかりではなく、染物屋などにとっては運の悪い時世じせいで、天保十三年の水野の改革で着物の新織新型、羽二重、縮緬
顎十郎捕物帳:18 永代経 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
法は、時世じせいと共に、移るもので不変ではない。わしの考え、わしが越前なら、天一坊の処分は、菅笠が無くとも、こう考えてよかろうのう。
大岡越前の独立 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
残りの有金ありがねで昔のゆめを追っているうちに、時世じせいはぐんぐんかわり、廻り燈籠どうろうのように世の中は走った。人間自然淘汰とうたで佐兵衛さんも物故した。
ものをはやすことはまかりならんぞ。いまは、そんな時世じせいではないのだッ、このバカどもめ!」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そこへ心を傾けないものは非国民でさえあった時世じせいの動きは、親に無断で学徒兵をこころざせば、そしてそれがひとり息子であったりすれば英雄の価値かちはいっそう高くなった。
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
時世じせいの言わせる一種の強味と憧憬しょうけいとがあらわれて、く人の心を動かした。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
「お前たちの時世じせいはすぎた。世の中は進んだ」
おじいさんのランプ (新字新仮名) / 新美南吉(著)
なかよくつき合っているご時世じせいですから、こちとらなどは、なんのうらみもくそもありゃしません
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)