早池峰はやちね)” の例文
早池峰はやちねの西どなりの群青ぐんじゃうの山のりょうが一つよどんだ白雲に浮き出した。薬師岳だ。雲のために知らなかった薬師岳の稜を見るのだ。
山地の稜 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
附馬牛つくもうしの谷へ越ゆれば早池峰はやちねの山は淡く霞み、山の形は菅笠のごとく、また片かなのへの字に似たり。この谷は稲熟することさらに遅く満目一色に青し。
遠野物語 (新字旧仮名) / 柳田国男(著)
この話は北上山脈のなかの第一の高山早池峰はやちね山に付随した口碑である。生出という所はその山の麓の部落である。
東奥異聞 (新字新仮名) / 佐々木喜善(著)
南昌なんしやう早池峰はやちねの四峯を繞らして、近くは、月に名のある鑢山たたらやま黄牛あめうしの背に似た岩山、杉の木立の色鮮かな愛宕山を控へ、河鹿鳴くなる中津川の浅瀬にまたがり、水音ゆるき北上の流に臨み
葬列 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
「あれが六角牛か、なるほど、じゃ早池峰はやちねは?」
土淵村にての日記 (新字新仮名) / 水野葉舟(著)
六五 早池峰はやちねは御影石の山なり。この山の小国に向きたる側に安倍が城といふ岩あり。険しき崖の中ほどにありて、人などはとても行き得べき処にあらず。
遠野物語 (新字旧仮名) / 柳田国男(著)
遠く岩手いはて姫神ひめかみ南昌なんしやう早池峰はやちねの四峰をめぐらして、近くは、月に名のある鑢山たゝらやま黄牛あめうしの背に似た岩山いはやま、杉の木立の色鮮かな愛宕山あたごやまを控へ、河鹿かじか鳴くなる中津川の淺瀬に跨り、水音ゆるき北上の流に臨み
葬列 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
その早池峰はやちねと薬師岳との雲環うんくわん
『春と修羅』 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
二七 早池峰はやちねより出でて東北の方宮古みやこの海に流れ入る川を閉伊川といふ。その流域はすなはち下閉伊郡なり。
遠野物語 (新字旧仮名) / 柳田国男(著)