日日にちにち)” の例文
まことに、野越与里、野越総江の口論は、あたかも村の往還を日日にちにち通ふ幌馬車のやうに、律儀頑固な鉄則を以て定められた晴れたる朝の合唱であつた。
竹藪の家 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
日日にちにち、報知の二大新聞が街を隔てて相聳あいそびえている。それに近く東京朝日も時事も宏壮な家屋を新築した。大きな新聞社は皆丸の内に集まって来る勢いが見える。
丸の内 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
悪気はもちろんなくても、面倒くさいと思っては、ものをむだにするのは、自分のさずかって来た一生の宝の中から、日日にちにちむだをしただけのものを捨てるようなものです。
女中訓 (新字新仮名) / 羽仁もと子(著)
はら出張演習しゆつちやうえんしふは二週間程しうかんほどぎた。我我われわれ日日にちにちはげしい演習えんしふつかれきつた。そして、六ぐわつ下旬げじゆんにまたT居住地きよぢうち歸營きえいした。中根なかねはなしはもうすつかりわすれられてゐた。
一兵卒と銃 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
日日にちにちその辺をさまよい歩くようになったが、その時分からひどく健康が衰えて来たので、親類の者や葛西家に使われている者などが心配して、無理に勧めて彼を熱海あたみへ転地さした。
赤い花 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)