新建しんだち)” の例文
その通りは、すべての都会にあるような混乱された一区劃で、新建しんだちで、家そのものさえなまめかしい匂いとつやとをもっているのであった。
幻影の都市 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
と、ぶつ/\ぼやきながら、その男は今度の新建しんだちをも誰ぞ貰つて呉れ手は無からうかと、人の顔さへ見ると無理強むりしひに押しつけてゐるさうだ。
町の旅籠はたごや料理屋へさかなを仕送っている魚河岸うおがしの問屋の旦那が、仕切を取りに、東京からやって来て、二日も三日も、新建しんだちの奥座敷に飲つづけていた。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
たてきってあったような、その新建しんだちの二階の板戸を開けると、直ぐ目の前にみえる山の傾斜面にひらいた畑には、麦が青々と伸びて、蔵の瓦屋根かわらやねのうえに、小禽ことりうれしげな声をたてていていた。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
木組などの繊細かぼそいその家は、まだ木香きがのとれないくらいの新建しんだちであった。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)