新嫁にいよめ)” の例文
先代の主人夫婦は、二、三年前に引きつづいて世を去ったので、新嫁にいよめになんの気苦労もなかった。夫婦の仲も睦まじかった。
経帷子の秘密 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
なにごとかと思われたのに、目の前でとついだばかりの新嫁にいよめがとつぜんはだを見せようというのです。
まだ新嫁にいよめでいらしッたころ、一人の緑子みどりご形見かたみに残して、契合ちぎりあった夫が世をお去りなすったので、あとに一人さびしく侘住わびずまいをして、いらっしゃった事があったそうです。
忘れ形見 (新字新仮名) / 若松賤子(著)
平原の平和な夜の沈黙を破って、遙か下のポルチウンクウラからは、新嫁にいよめを迎うべき教友らが、心をこめて歌いつれる合唱の声が、静かにかすかにおごそかに聞こえて来た。
クララの出家 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
「思召しは有難いが、こんなやくざな野郎が居ちゃ眼障りだろう、——それに、あっしにしても、美しい新嫁にいよめ振りを見せ付けられちゃ、たまらねえ、親分止め立ては殺生だぜ」
姉様遊びの姉さまが新嫁にいよめの別名であったことは、あの顔より大きな髪飾かみかざり、紅の衣裳いしょう染模様そめもようを見てもわかるが、その花オカタが古いオカタと同居して、特に姉様と呼ばれて区別せられる必要などは
こども風土記 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
夫たるべき陽吉が内輪に歩行を運び、妻たるべき新嫁にいよめは大またに外輪だったのです。
一見してだれの目にも新婿にいむこ新嫁にいよめと見えるうらやましいひと組みです。
新嫁にいよめもまた同じ町内の同じ薬種問屋の妹娘で名はお冬。