斎院さいいん)” の例文
いきどおろしい、竹童の心はのごとくたぎりたって、こうさけびながら方角ほうがくもさだめず、裏宮うらみやのおどうめぐり、いましも、斎院さいいんの前まであるいてきた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そのころ前代の加茂かも斎院さいいんがおやめになって皇太后腹の院の女三の宮が新しく斎院に定まった。
源氏物語:09 葵 (新字新仮名) / 紫式部(著)
今日までの唯一の手がかりは、『延喜式』六、斎院さいいんに「螻䒾」、同十五、内蔵に「螻蓑」とあるのみである。蓑を着た様が、短い硬い羽を有つけらの姿に似た所から来たのであろう。
蓑のこと (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
かねチャンギリもきうきとして、風流小袖ふうりゅうこそで老幼男女ろうようなんにょが、くることくること、帰ること帰ること、今宮神社いまみやじんじゃの八神殿しんでんから、斎院さいいん絵馬堂えまどう矢大臣門やだいじんもん、ほとんどりなすばかりな人出ひとでである。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
などと言って、を明るくして、格子を上げて源氏を迎えた。侍従は一方で斎院さいいんの女房を勤めていたからこのごろは来ていないのである。それがいないのでいっそうすべての調子が野暮やぼらしかった。
源氏物語:06 末摘花 (新字新仮名) / 紫式部(著)