敏子としこ)” の例文
と長女の郁子と次女の敏子としこはこんな場合決して黙っていない。高女二年と、尋常六年のくせに女性の権利丈けはもう一人前に主張する。
親鳥子鳥 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
女は敏子としこよりも若いらしい。雨に洗われた朝日の光は、その肉附きの豊かな肩へ、——派手はでな大島の羽織の肩へ、はっきり大幅に流れている。
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
木村ハ茶ノ間デ妻ヤ敏子としこトシバラク話シテイタガ、三時過ギニ「麗しのサブリナ」ヲ見ニ行クト云ッテ、三人デ出カケタ。
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
佐々木京助の妻敏子としこ所謂いわゆる新らしい女即ち新時代の女性であった。新時代の女性の通性として、彼女は男性的の性格を多分に具え、理性が比較的発達して居た。
死の接吻 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
「その通り、次に、恩田と云う老人に会ったらね、いいですか、敏子としこさんに会わして下さい」
自殺を買う話 (新字新仮名) / 橋本五郎(著)
郁子いくこが笑った。敏子としこが食卓の下から膝を小突いたのである。この二人は長兄の形勢が悪いとしめし合せて嬉しがる。好くない癖だ。
親鳥子鳥 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
ハムモックの側に立っているのは、上海シャンハイの旅館にいた時より、やや血色の敏子としこである。髪にも、夏帯にも、中形ちゅうがた湯帷子ゆかたにも、やはり明暗の斑点を浴びた、白粉おしろいをつけない敏子である。
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
敏子としこが笑ったのは、ついこの間のことのように覚えていたが、僕は今日から冬休みになった。当分くつろげる。郁子いくこも明日きりだ。
親鳥子鳥 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「おい。敏子としこ。」
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)