その頃、私の父は摂津大掾せっつのだいじょうの弟子で、文楽座ぶんらくざに出ていた。父は二つのとき失明した。脳膜炎を患ったためだという。
生い立ちの記 (新字新仮名) / 小山清(著)
摂津大掾せっつのだいじょう亡き後の名人三代目越路太夫こしじだゆう眉間みけんには大きな傷痕きずあとが三日月型に残っていたそれは
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
役者の似顔絵で知られていた絵双紙えぞうしやの、人形町の具足屋ぐそくやでは、「名物人気揃」と題して、人情咄にんじょうばなしの名人三遊亭円朝えんちょうや、大阪初登り越路太夫こしじだゆう(後の摂津大掾せっつのだいじょう)とならべて綾之助の似顔をりだした。
竹本綾之助 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
私の父は初め五世野沢吉兵衛の手ほどきを受け、その後、後の摂津大掾せっつのだいじょうの門に入り、越喜太夫という名である。イエは師匠の名をそっくり貰ったわけである。
前途なお (新字新仮名) / 小山清(著)
十三、四の頃大阪へ修業に行き、初め五世野沢吉兵衛の手解てほどきを受け、その後、後の摂津大掾せっつのだいじょうの弟子になった。大阪へは祖父の姉で出戻りの身をそのまま家に寄食していた人が伴いて行った。
桜林 (新字新仮名) / 小山清(著)