掌中しやうちゆう)” の例文
雲飛は所謂いはゆ掌中しやうちゆうたまうばはれ殆どなうとまでした、諸所しよ/\に人をしてさがさしたが踪跡ゆきがたまるしれない、其中二三年ち或日途中とちゆうでふと盆石ぼんせきを賣て居る者に出遇であつた。
石清虚 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
殘るのは主人の彌八郎と、伜の彌太郎だけ、その主人の彌八郎は、掌中しやうちゆうの花といつくしんだ娘の非業の死に、悉く打ち萎れてしまつて、何を訊いても埒があきません。
しかし、つかんだと思つたそのたまは、いつの間にかかれの掌中しやうちゆうから落ちて行つてゐた。
ある僧の奇蹟 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
「ところが、燕女は親方の權之助の方に心を寄せてゐる。毎日舞臺の上で、てのひらの上で舞はせてゐる權之助も、燕女をいとしく思ふのも無理のないことだらう。あれこそ本當に掌中しやうちゆうの珠といふ奴だ」