捨扶持すてぶち)” の例文
まず知っているとして置こう。あの老人は人物だ。徳川家の忠臣だ。しかし一面囚人めしゅうどなのだ。同時に徳川家の客分でもある。捨扶持すてぶち五千石を
銅銭会事変 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
その間じゅう、若い頃も年とった今も、僕はあんたから、年額五百ルーブリなりの、乞食こじきも同然の捨扶持すてぶちを、ありがたく頂戴ちょうだいしているにすぎないんだ。
この婆さんの娘はさる高名な占師(これが兄弟の叔父さんだ)の妾であつたが、若死して、婆さんは三十円の捨扶持すてぶちで占師に余世の保証を受けてゐた。
二十一 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
そこで安く積っても四千石や五千石の捨扶持すてぶちと、ささづめ番頭ばんがしらのお役付が、帰る先にはブラ下がっている。
鳴門秘帖:06 鳴門の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「あれで小堀樣から、少しでも捨扶持すてぶちが貰へるだらうよ——憎いのは捨吉だ。お主の一粒種を殺し、お勘坊を殺した上、女房にまで濡れ衣を着せようとしやがつた」
「あれで小堀様から、少しでも捨扶持すてぶちが貰えるだろうよ——憎いのは捨吉だ。お主の一粒種を殺し、お勘坊を殺した上、女房にまで濡れ衣を着せようとしあがった」
あの有名な天一坊事件、その張本の山内伊賀介、その後身ではあるまいか? 非常な学者だというところから、特に助命して大岡家に預け、幕府執政の機関とし、捨扶持すてぶちをくれていたのかもしれない。
銅銭会事変 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)