振下ぶらさ)” の例文
……第一寄進に着いた電燈に対してもお鹿の女房が辞退するのを、遠慮は要らない、で直ぐに、あの、前刻さっきのあれ、ひな栄螺さざえはまぐりの新聞包みを振下ぶらさげて出た。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
健三は比田の振下ぶらさげている金時計と金鎖の事を思い出した。兄はそれを天麩羅てんぷらだろうといって陰で評していたが、当人はどこまでも本物らしく見せびらかしたがった。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
……天井裏で声がして、十五六の当のちびは、どこからあらわれたか、すすつないで、その天井から振下ぶらさげたように、二階の廊下を、およそ眠いといった仏頂面で、ちょろりと来た。
菎蒻本 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)