指弾しだん)” の例文
砂馬のあの悪遊びだって、旧道徳の眼からすれば、破廉恥はれんち極まるものかもしれないが、あれを俺は、旧道徳にくみして、指弾しだんすることはできないのだ。
いやな感じ (新字新仮名) / 高見順(著)
また、そのむかしは郷里からも肉親からも、悪蛇あくだのように指弾しだんされていた生信房に、そういう余徳が身についてきたことを、どんなにかうれしく思った。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
また、私たちは、先生が、いかなる事情の下においても、教育家として社会から指弾しだんされるような言動に出られようとは、断じて信じることが出来ません。
次郎物語:04 第四部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
待っていたのです。好人物と言われて笑われ、ばかと言われて指弾しだんされ、廃人と言われて軽蔑されても、だまってこらえて待っていた。どんなに、どんなに、待っていたか。
花燭 (新字新仮名) / 太宰治(著)
しかし主家を再興した後で、仇討のできないことは、何人だれよりも内蔵助自身一番よく知っていた。仇討をしなければ、同志をあざむいたことになるばかりでなく、永く世の指弾しだんを受けるかもしれない。
四十八人目 (新字新仮名) / 森田草平(著)
上洛なせば、堂上こぞって尊氏を指弾しだんし、身の申し開き如何いかんを問わず、万々の御譴責ごけんせきはあるだろう。……が、わしは天皇の御寵恩ごちょうおんにそむき奉ることはできぬ。
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
世の中のひとが、もし、あの人を指弾しだんするなら、おれは、どんなにでもして、あのひとをかばわなければならぬ。あの女は、いいひとだ。それは、おれが知っている。信じている。
姥捨 (新字新仮名) / 太宰治(著)
日ごろのあることないこと、非違ひい指弾しだんの紛々のうるささに、さしも、かなわじと、敗れ果ててのおん顔……。じじも、無念の涙に、よう詳しくもまだ、伺うてはおりませぬ