持扱もてあつか)” の例文
そこで小学校の生徒たちの二列を造って、弁当を持扱もてあつかいながら坂を下りに帰るのをたが、今日は、思掛けない雨だったものと見える。
卵塔場の天女 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
さすがに持扱もてあつかひて直行の途方に暮れたるを、老女は目をほそめて、何処いづこより出づらんやとばかり世にもあやしき声をはなちてゆるく笑ひぬ。彼は謂知いひしらぬ凄気せいきに打れて、覚えず肩をそびやかせり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
落度があればそれッきり、まことに頃日このごろの様子では、内々じゃ持扱もてあつかって、私の落度を捜しているかも知れませんもの。大一座ででもあるなら知らず、差向いでは、串戯じょうだんも思切っては言えませんわ。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)