手蹟しゆせき)” の例文
翌日果して熱海より便たよりはありけれど、わづかに一枚の端書はがきをもて途中の無事と宿とを通知せるに過ぎざりき。宛名は隆三と貫一とを並べて、宮の手蹟しゆせきなり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
もう一つ困つたことに、ガラツ八が穴の中から拾つた密書の手蹟しゆせきが、源助のでも、伊之助のでも、辰藏のでも、彌十のでも、小僧達のでもなかつたことです。
それから二人ふたり庫裡くりへ行つて、住職の坊さんに宝物はうもつを見せて貰つた。その中に一つ、銀の桔梗ききやうきんすすきとが入り乱れた上に美しい手蹟しゆせきで歌を書いた、八寸四方くらゐの小さなぢくがある。
京都日記 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
平次はお品の手から手紙を受取りましたが、見覺えのある手蹟しゆせきではありません。