扉口ドアぐち)” の例文
それから、スリッパの跡の調査を始めたが、それは聖窟クリプトの階段を上りきった頭上の扉口ドアぐち——すなわち墓地の棺龕カタファルコまで続いている。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
そして女湯の扉口ドアぐちへ行こうとした、ちょうどその時彼は其処で湯屋の女房とばったり鉢合はちあわせをしたのみか、ちょっと見咎みとがめられたのであった。
電気風呂の怪死事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
幾何学きかがくの題は至極しごく平易なのであった、光一はすらすらと解説を書いた、かれは立って先生の卓上たくじょうに答案をのせつくえと机のあいだを通って扉口ドアぐちへ歩いたとき
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
「さうねえ。でも玄関で帰るつて仰有おつしやりはしないかしら」着ずまひを直しながら常子はもう小刻みに扉口ドアぐちに急いだ。「よくつてよ、わたしがよくお礼云つて置きますから」
朧夜 (新字旧仮名) / 犬養健(著)
と詫びようとした時、相手の男はすさまじく歯を剥出むきだしたと思うと、いきなり扉口ドアぐちへ飛鳥のようにとびついた。そしてスイッチの音がしたとみる刹那、部屋中の電灯がぱっと消えて四辺あたりは真暗闇になった。
亡霊ホテル (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
そして、彼は、素早く女湯の扉口ドアぐちから中へ入って、自分が殺したお照の屍体の側を過ぎて脱衣場へやって来た。
電気風呂の怪死事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)