戸締とじま)” の例文
泥棒が這入ったそうですねと笑っている。戸締とじまりは好くしてあったのですかと聞くから、いや、どうもあまり好くありませんと答えた。
永日小品 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
騎馬巡査きばじゅんさが町をねり歩いては、戸締とじまりをげんじゅうにするよう、家々によびかけた。小学校は午後三時には授業じゅぎょうをうち切って、児童じどう帰宅きたくさせた。
一度泥棒が入って後、彼女は離れて独女中部屋に寝るを恐れたが、部屋に戸締とじまりをつけてやると、安心して寝た。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
二人は、もう畳の上にすわって話している事が憂鬱ゆううつになったので、僕は彼女に戸締とじまりを命じて帽子ぼうしとステッキを持った。彼女は、紅色の鯨帯をくるくると流して自分のこしに結び始めた。
魚の序文 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
「旦那さま。もうここの戸締とじまりをいたしてよろしゅうございましょうか」
鞄らしくない鞄 (新字新仮名) / 海野十三(著)
戸締とじまりは?」
戸締とじまりをして夫のあとから入ってきたお延は寝巻ねまきの上へ平生着ふだんぎの羽織を引っかけたままそこへぺたりと坐った。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「そうだ。いつもかけてある。厳重に戸締とじまりしてありました」
四次元漂流 (新字新仮名) / 海野十三(著)