懐裡ふところ)” の例文
旧字:懷裡
馭者は懐裡ふところさぐりて、油紙の蒲簀莨入かますたばこいれを取り出だし、いそがわしく一服を喫して、直ちに物語の端をひらかんとせり。白糸は渠が吸い殻をはたくを待ちて
義血侠血 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「善さん、しッかりなさいよ、お紙入れなんかお忘れなすッて」と、お熊が笑いながら出した紙入れを、善吉は苦笑いをしながら胸もあらわな寝衣ねまき懐裡ふところへ押し込んだ。
今戸心中 (新字新仮名) / 広津柳浪(著)
貫一はこの五年間の家族をめての一人も余さず、家倉と共に焚尽やきつくされて一夜の中にはかなくなりをはれるに会ひては、おのれが懐裡ふところの物の故無ゆゑなく消失せにけんやうにも頼み難く覚えて
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
小猫は懐裡ふところに抱かれたままで、ごろごろうなっています。
嵐の夜 (新字新仮名) / 小川未明(著)
善吉は懐裡ふところの紙入れを火鉢の縁に置き
今戸心中 (新字新仮名) / 広津柳浪(著)