情婦をんな)” の例文
情婦をんなが有るのがどうしたと、かう打付ぶつつけて有仰らんのです。間さん、私貴方に向つてそんな事をかれこれ申す権利は無い女なので御座いますよ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
『彼奴の情婦をんなにしちや、すこし年寄りだな』、それから二日たつた日、他の水兵達は彼の後姿を笑ひながら、さういつた。『けれど、馬鹿に仲が善ささうだな』
さればお定は、丑之助がお八重を初め三人も四人も情婦をんなを持つてる事はく知つてゐるので、或晩の如きは、男自身の口から其情婦共の名を言はしてくすぐつて遣つた位。
天鵞絨 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
私は金につまつて心中なんぞを為た、と人にわらわれましても、情婦をんなの体を売つたお陰で、やうやう那奴あいつ等は助つてゐるのだ、と一生涯言れますのは不好いやで御座います。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
詐取かたりで御座いますとも! 情婦をんなを種に詐取を致すよりは、費消つかひこみの方が罪ははるかに軽う御座います。そんな悪事を働いてまでも活きてゐやうとは、わたくしは決して思ひは致しません。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)