わず)” の例文
余は天井てんじょうを眺めながら、腹膜炎をわずらった廿歳はたちの昔を思い出した。その時は病気にさわるとかで、すべての飲物を禁ぜられていた。
思い出す事など (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
さて洛中らくちゅう洛外らくがいの非人乞食で大病難病をわずらふ者を集め、風呂に入れて五体をきよめ、暖衣を与へて養生をさするに、癩瘡らいそうなんどの業病ごうびょうたちまちに全快せぬはない。
ハビアン説法 (新字旧仮名) / 神西清(著)
「大人。……仰っしゃって下さいませ。おそらく、あなたのお胸は、国家の大事を悩んでいらっしゃるのでございましょう。今の長安の有様を、憂いわずらっておいでなのでございましょう」
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その不具の原因は、千恵もたうとう聞き出すことができませんでしたが、決して戦地だの空襲だののせゐではなくて、幼いころ何か大病をわずらつたときに切断されたものだといふことでした。
死児変相 (新字旧仮名) / 神西清(著)
『すぐり』を書いてから二年の後、トルストイがわずらったことがあった。