思合おもいあわ)” の例文
こういう児であったればこそと先刻さっきの事を反顧はんこせざるを得なくもなり、また今のこを川に投げる方が宜いといったこの児の語も思合おもいあわされて
蘆声 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
慶三はお千代が芸者をしている時分にはく今度の様な不始末を見せた女である事を思合おもいあわせた。よくよく考えて見るとお千代ほどだらしのない女はない。
夏すがた (新字新仮名) / 永井荷風(著)
六郎氏が運転手に与えた手袋の飾釦がとれていたことなど思合おもいあわせば、かの屋根裏に潜んでいた者は、当の小山田六郎氏ではなく、大江春泥であったと、そんな不合理な事が考えられるでしょうか。
陰獣 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
数日の後先生再び京都におもむかんとせらるるや我いかにしけん今までは一度も先生を停車場に送りたる事なかりしを。あとにて思合おもいあわすれば虫が知らせしなるべし。
書かでもの記 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
去年からの疑惑とを思合おもいあわせて、これから先どんな事が起るかも知れないと、急に空おそろしくなって、今まで神信心は勿論もちろん、お御籤みくじ一本引いたことのない身ながら
つゆのあとさき (新字新仮名) / 永井荷風(著)