心遣こころづかい)” の例文
しかしこんな心遣こころづかい事実じじつにおいても、普通ふつう論理ろんりにおいてもかんがえてればじつ愚々ばかばかしい次第しだいで、拘引こういんされるだの
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
実はそんな心遣こころづかいをしなくとも、守がさい前窓の外を見た時、もうその辺に人影さえなかった程だから、賊はとっくに逃げ去ってしまったに違いないのだけれど。
妖虫 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
とにかく、こんな心遣こころづかいが多少病的なものであることは、彼も自分で気がついている。しかし、自己的な虚栄的なこういう気持を、別に、死んだ伯父に対して済まないとは考えない。
斗南先生 (新字新仮名) / 中島敦(著)
その生きるための空気については、あるのが当然だと思っていまだかつて心遣こころづかいさえした事がない。その心根こころねただすと、吾らが生れる以上、空気は無ければならないはずだぐらいに観じているらしい。
思い出す事など (新字新仮名) / 夏目漱石(著)