後退しりごみ)” の例文
捕卒の一人は後退しりごみする彭を判官の前へ引き据えた。彭はどんな目にあわされることかと思って生きた心地きもちがしなかった。
荷花公主 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
彼には、美奈子が返事をしないのが、処女らしい恥しさと後退しりごみのためだとより、思はれなかつた。彼は、最初から誘はなければよかつたと思ひながら、一寸気まづい思ひで、部屋を出た。
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
なつかしい姿を見るにつけても、お蔦に思較べて、いよいよ後暗うしろめたさに、あとねだりをなさらないなら、久しぶりですから一銚子ひとちょうし、と莞爾にっこりして仰せある、優しい顔が、まぶしいように後退しりごみして、いずれまた
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
彼には、美奈子が返事をしないのが、処女らしい恥しさと後退しりごみのためだとより、思われなかった。彼は、最初から誘わなければよかったと思いながら、一寸ちょっと気まずい思いで、部屋を出た。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)