往反おうへん)” の例文
その夜、奥の院に仏法僧鳥ぶっぽうそうちょうの啼くのを聴きに行った。夕食を済まし、小さい提灯ちょうちんを借りて今日の午後に往反おうへんしたところを辿って行った。
仏法僧鳥 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
仲平はこの発明を胸におさめて、誰にも話さなかったが、その後はいて兄と離れ離れに田畑へ往反おうへんしようとはしなかった。
安井夫人 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
この往反おうへんの最中に忽ち優善が失踪しっそうした。十二月二十八日に土手町の家を出て、それきり帰って来ぬのである。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
江戸城へ往反おうへんする、歳暮拝賀の大小名諸役人織るが如き最中に、宮重の隠居所にいる婆あさんが、今お城から下がったばかりの、邸の主人松平左七郎に広間へ呼び出されて
じいさんばあさん (新字新仮名) / 森鴎外(著)
二人の間には詩筒しとう往反おうへん織るが如くになった。
魚玄機 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
純一の不安な目は往反おうへんしている。
青年 (新字新仮名) / 森鴎外(著)