当麻寺たいまでら)” の例文
また無数の至細な糸が引出されます。すなわち昔藤原豊成の女、中将姫が和州当麻寺たいまでらにあるハスのこの糸で曼陀羅を織ったと言い伝えられて居ます。
植物記 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
入峰にゅうぶ三度の大峰の修験者しゅげんじゃにござりまするが、月のうち十日は、当麻寺たいまでら行院ぎょういんへ参ッて、役僧座に勤めておりまする」
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
黒い塗り笠がちらりと光つて、面に仄かな影がさして、薄青い着つけが細つそりして、——まあ当麻寺たいまでら画巻ゑまきか何かの女房に会つたやうな心もちである。
金春会の「隅田川」 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
その感じは、高田*で汽車を降りて平坦な田畑の間を当麻寺たいまでらの方へと進んで行く間も、絶えず続いていた。
古寺巡礼 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
東大寺の大仏、同じくあかがね燈籠扉のレリーフ、法華堂ほつけだう(三月堂)の諸仏像、当麻寺たいまでらの諸像、法隆寺の九面観音像、その他、優にエヂプト、ギリシャの彫刻にも匹敵するものが多いのである。
二千六百年史抄 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
二上山を背景に、中腹に立つ当麻寺たいまでらの東西両塔の典雅な有様、あるいは室生寺むろうじの大杉の間に立つ五重塔の華麗な姿も忘れられない。しかし私は結局、薬師寺の東塔に最も感心するのである。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
凹巷等が当麻寺たいまでらに於て松珠に再会したことは載せて巻中にある。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
大和やまと当麻寺たいまでらにて、一夜よそながら、お目通りした覚えがありまする。
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)