弾傷たまきず)” の例文
幻でもなければ夢でもない! 今一匹の大熊が、脚に弾傷たまきずを負いながら、既に血迷った見えぬ眼で、数馬に向かって飛びかかった。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
伸びる盛りの肉体だった、武蔵の弾傷たまきずがすっかりなおる頃には、又八はもうまき小屋の湿々じめじめした暗闇に、じっと蟋蟀こおろぎのような辛抱はしていられなかった。
宮本武蔵:02 地の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
棒に縛られて舁がれてゆくこの高雅な山のさちは、まるで童話の中の不仕合せな王子のやうに慎ましく、痛ましい弾傷たまきずは見えなかつたけれど、いかめしい角のある首が変なところへ挟まつたまま
測量船 (新字旧仮名) / 三好達治(著)
五日の間に、すっかり踵の弾傷たまきずは悪化していたのだ。
流行暗殺節 (新字新仮名) / 佐々木味津三(著)
けれども何処からも血は出ていず、弾傷たまきずらしい箇所ところなどは何処にも無いのでございます。
西班牙の恋 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)