強弩きょうど)” の例文
いかなる強弩きょうど(強力な石矢)もその末は魯縞ろこう(うすい布)をうがちえず、壮時の麒麟も、老いてはたいてい駑馬にも劣るようになる。
死刑の前 (新字新仮名) / 幸徳秋水(著)
人間同士はあたりまえの挨拶をしたけれども、犬は人間の間に立ちふさがって、強弩きょうどの勢いを張っておりました。
大菩薩峠:06 間の山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
わたしもそれを説明するに適当の言葉を知らないのを甚だ残念に思う。ここらが明治以後における歌舞伎劇の最高潮に達した時代で、その後は強弩きょうどの末である。
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
裏はメンデルスゾーンの『プレリュード=ホ短調』(一四五九)であったが、これは強弩きょうどの余勢だ。
これまさに強弩きょうど末勢まっせい。——加うるにその水軍は、北国そだちの水上不熟練の勢が大部分です。
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
今日の金港堂は強弩きょうどすえ魯縞ろこう穿うがあたわざる感があるが、当時は対抗するものがない大書肆だいしょしであった。その編輯へんしゅうに従事しその協議にあずかるものは皆錚々そうそうたる第一人者であった。
美妙斎美妙 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
吾輩は主人の大事件を写したので、そんな人の大事件をしるしたのではない。尻が切れて強弩きょうど末勢ばっせいだなどと悪口するものがあるなら、これが主人の特色である事を記憶して貰いたい。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
『八犬伝』もまた末尾に近づくにしたがって強弩きょうどの末魯縞ろこう穿うがつあたわざるうらみがいささかないではないが、二十八年間の長きにわたって喜寿に近づき、殊に最後の数年間は眼疾を憂い
八犬伝談余 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
矢つがえ無用、強弩きょうども要らぬ
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)