引抽ひきだし)” の例文
お高は引抽の中の衣服きものを手早く胡蓙ござの上へ出して、傍の渋紙包を解き、その中のたたんで二つにしてあるのを延ばし延ばし引抽ひきだしの中へ入れた。平吉は主婦のことばを待っていた。
春心 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
「いいから」窓の左側になった箪笥たんすへ指をやって「あの引抽ひきだしを開けておくれよ」
春心 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
広栄は急いで机の引抽ひきだしけて帳面と算盤そろばんをしまい、それから硯箱すずりばこふたをしながら来客の用件について考えた。縁側に二三人の跫音あしおとが聞えて来た。じょちゅうが客を玄関脇かられて来たところであった。
春心 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)