引包ひきつつ)” の例文
ず口のうちでいって見て、小首を傾けた。ステッキが邪魔なのでかいなところゆすり上げて、引包ひきつつんだそのそでともに腕組をした。菜種の花道はなみち、幕の外の引込ひっこみには引立ひったたない野郎姿やろうすがた
春昼後刻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
たちまち、たまらない草イキレと、木蔭の青葉にれ返る太陽の芳香においが、おそろしい女の体臭のように彼を引包ひきつつんだ。行けば行くほどその青臭い、物狂おしい太陽の香気が高まって来た。
笑う唖女 (新字新仮名) / 夢野久作(著)