庭園にわ)” の例文
仕方がないからその消えたランプをそこへ置いて、それから庭園にわへ踏みだした。砂利が靴の下でざくざく鳴って、篠つく雨が両人ふたりを叩いた。
犬舎 (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
というのは、夫を失って悲歎に暮ていなければならない筈の瑠璃子が、さも呑気らしく、微笑さえ浮べて、月夜の庭園にわのそぞろ歩きをしているとは、ちと変ではないか。
白髪鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
抜いた刀を肩にかつぎ、ヒラリと庭へ躍り出たが、見れば庭園にわの四方八方ありの這い出る隙間もなく鎧武者よろいむしゃヒシヒシと取り囲み、高張り提灯ぢょうちん松火まつ篝火かがりび、真昼の如くえ光り
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
アルトヴェル氏は、窓掛をあげて、真暗な庭園にわの方を覗いてみると、濡れた樹々の枝はやいばのように光り、秋の木の葉が風に吹きまくられて、ばらばらっと壁を打った。
犬舎 (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
雨の音が一きわ騒がしくなって、風が煙突にうなり、庭園にわの方では木の枝の断切ちぎれて飛ぶ音がする。それに、猟犬どもが間断ひっきりなしに吠え立てるので、暴風雨あらしの叫びや樹々の軋る音も気圧けおされるくらいだ。
犬舎 (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)