平常ひごろ)” の例文
『怎したけな?』と囁いてみたが返事がなくて一層歔欷すすりなく。と、平常ひごろから此女のおとなしく優しかつたのが、俄かに可憐いぢらしくなつて来て、丑之助はまた
天鵞絨 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
平常ひごろ、彼女が思っていた通り、やはり伏原半蔵は優し気のある人だった。年は四十を越え、無頼ぶらいな浪人仲間に身過みすぎはしているが、今の言葉でも、友誼ゆうぎに厚い事はわかる……。
死んだ千鳥 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「はたまた拙者妻こと、京より離別つかまつり縁者方へ返し申候。伜、娘儀いかように罷成まかりなり候ともそれまでの事に候」といい、さらに平常ひごろ方外の友として、その啓沃けいよくを受けた良雪に対しては
四十八人目 (新字新仮名) / 森田草平(著)
平常ひごろから、住民の衣、食、住——その生活全體を根本ねつから改めさせるか、でなくば、初發患者の出た時、時を移さず全村を燒いて了ふかするで無ければ
赤痢 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
平常ひごろから、住民の衣、食、住——その生活全体を根本ねつから改めさせるか、でなくば、初発患者の出た時、時を移さず全村を焼いて了ふかするで無ければ
赤痢 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
お定は、平常ひごろならば恁麽こんな事を余り快く思はぬのだが、常々添寝した男から東京行の餞別を貰つたと思ふと、何となく嬉しい。お八重には恁麽事が無からうなどゝ考へた。
天鵞絨 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
重兵衞はそれが平常ひごろの遺恨で、些つとした手紙位は手づから書けるのを自慢に、益々頭が高くなつた。規定きまり以外の村の費目いりめの割當などに、最先に苦情を言ひ出すのは此人に限る。
赤痢 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)