巌畳がんでふ)” の例文
丑松の父といふは、日頃極めて壮健な方で、激烈はげしい気候に遭遇であつても風邪一つ引かず、巌畳がんでふ体躯からだかへつて壮夫わかものしのぐ程の隠居であつた。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
津下君は久しく見ぬ間に、体格の巌畳がんでふな、顔色の晴々した人になつてゐて、昔の憂愁の影はもうあとだになかつた。私は「書後」の筆を投ずるにのぞんでつゝしんで君の健康を祝する。
津下四郎左衛門 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
それ等のアフオリズムは僕の気もちをいつか鉄のやうに巌畳がんでふにし出した。
歯車 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
いや、我々は炉に燃える火や畠の野菜や素焼きのかめ巌畳がんでふに出来た腰かけの中にも多少のマリアを感じるであらう。マリアは「永遠に女性なるもの」ではない。唯「永遠に守らんとするもの」である。
西方の人 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)