嶮難けんなん)” の例文
寒蝉敗柳かんせんはいりゅうに鳴き大火西に向かいて流るる秋のはじめになりければ心細くも三蔵さんぞうは二人の弟子にいざなわれ嶮難けんなんしのぎ道を急ぎたもうに、たちまち前面に一条の大河あり。
悟浄出世 (新字新仮名) / 中島敦(著)
輦路れんろ嶮難けんなんなるところから木曾路は多く御板輿おんいたごしで、近衛このえ騎兵に前後をまもられ、供奉ぐぶの同勢の中には伏見二品宮にほんのみや徳大寺宮内卿とくだいじくないきょう、三条太政だじょう大臣、寺島山田らの参議、三浦陸軍中将
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
世の中は艱難かんなんの待合室であり、人間は胎内より業苦ごうくを負って生れるという、されば人生は風雪を冒して嶮難けんなん悪路を往くが如く、二十四時寸刻の油断もならぬ酷薄苛烈なものである
評釈勘忍記 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)