岩槻いわつき)” の例文
「そうだ。お前も、知っているな。きやつが、久方ひさかたぶりに岩槻いわつきより出府して参って、たずねると申してきている。待たずばなるまい」
巷説享保図絵 (新字新仮名) / 林不忘(著)
いまは埼玉県の岩槻いわつき市に編入されたが、慈恩寺という村があった。昔の寺領で、同じ名の慈恩寺と呼ぶ天台宗の寺があった。
故郷七十年 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
埼玉県鴻巣こうのすの辺りから岩槻いわつきこし亀有かめあり、亀戸を経て東京湾に延長する一地震帯があって、この地震帯から、小規模ではあるが、強烈な地震が起こる。
地震なまず (新字新仮名) / 武者金吉(著)
浅野軍は武蔵のくに岩槻いわつき城を攻め落して来たのだが、その余勢を駆って忍城へ迫り、なお躊躇ちゅうちょする石田本軍をしりめに激しく戦って、ついに城の一角へ突入することができた
荒法師 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
それから岩槻いわつき鴻巣こうのすとは共に雛人形ひなにんぎょうの産地で有名であります。後者は土俗的な人形でも久しく名を得ました。雛祭ひなまつりの風習が続く限りこれらの土地に仕事は絶えないでありましょう。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
武州岩槻いわつきからくる道と、千住からくる葛飾かつしかの往還とが、ここで一路ひとつになって奥州街道となる幸手さっての宿に入り込んだのは前の四人で、高野橋の袂、網屋という旅籠はたごの一室に陣取り、川魚料理をさかな
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)