山椒魚さんしょううお)” の例文
岩の割れ目から、月の雫のように清水の玉が滴り落ちる渓流の源には、山椒魚さんしょううおが棲んでいる。これは、源流の水温が最も低いからである。
雪代山女魚 (新字新仮名) / 佐藤垢石(著)
私はそれまで牻牛児げんのしょうこ山椒魚さんしょううおの一種のようなものだと思い込んでいたのだ。鳴尾君はこんな風に私に野外教授を施してくれた。
西隣塾記 (新字新仮名) / 小山清(著)
伊四郎が見たのは龍ではない、おそらく山椒魚さんしょううおであろうという者もあった。そのころの江戸には川や古池に大きい山椒魚も棲んでいたらしい。
異妖編 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
種ヶ池には今年できた小屋があり、池には山椒魚さんしょううおがいると書いてありました。鹿島槍を下って道は峰を巻いています。
単独行 (新字新仮名) / 加藤文太郎(著)
それは、「山椒魚さんしょううお」という作品であった。童話だと思って読んだのではない。当時すでに私は、かなりの小説通をもってひそかに自任していたのである。
『井伏鱒二選集』後記 (新字新仮名) / 太宰治(著)
全く死滅しないまでも山椒魚さんしょううおかもはしのような珍奇な存在としてかすかな生存をつづけるに過ぎないであろう。
俳句の型式とその進化 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
月が雲を割って現われた。はるかのむこうで銀箔のように、平らに何か光っている。山椒魚さんしょううおんでいる湖なのさ。……お聞きよお聞きよときの声が聞こえる。
娘煙術師 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
又六の顔は、涙と汗にまみれて、山椒魚さんしょううおのように醜く光ります。
山椒魚さんしょううおや鰻は、ふじ子をいやがらせたばかりではなく
或る少女の死まで (新字新仮名) / 室生犀星(著)
と問われるなら、さしずめ山椒魚さんしょううおと答えておこう。
山椒魚 (新字新仮名) / 北大路魯山人(著)
電車は光りながら山椒魚さんしょううおうのに似ている。
伯爵の釵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
はじめに、黄村先生が山椒魚さんしょううおって大損をした話をお知らせしましょう。逸事の多い人ですから、これからも時々、こうして御紹介したいと思います。
黄村先生言行録 (新字新仮名) / 太宰治(著)
電車は光りながら山椒魚さんしょううおふのに似て居る。
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)