展開ひら)” の例文
広い裏庭が展開ひらけていて、木立や築山や泉水などがあり、泉水の水が木洩れの月光に、チロチロ一所光っていた。
十二神貝十郎手柄話 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
あの場所の景色とちがうところは、あそこでは、塚と林との彼方むこうが、広々と展開ひらけた野原だったのに、ここでは、土塀が、灰白はいじろく横に延びているだけであった。
血曼陀羅紙帳武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
周囲あたりには大薮があるばかりで、その他は展開ひらけた耕地であり、耕地には人影は見えなかった。
剣侠 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
茫々と展開ひらけている芒の原には、春の陽がなんどりとあたってい、小松が斑点しみのようにところどころに生え、小丘が波のうねりのように、紫ばんだ陰影かげをもって、すすきの上に起伏していた。
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
ところで……広々と展開ひらけている耕地を海とし、立ち連なっている林を陸とすれば、道了塚は、陸に近い、小島と云ってよく、その小島にあって、陸の林の一方を眺めたなら、林の縁を
血曼陀羅紙帳武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
不平そうにあやめは立ち上ったが、開けられてある障子の間から、縁側や裏庭が見え、卯の花が雪のように咲いている、垣根を越して麦や野菜の、広々とした青い畑が、数十町も展開ひらけて見えた。
仇討姉妹笠 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
眼の前に展開ひらかれた洞窟いわやさまは別に奇もなく不思議もない。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
道了塚を巡って、たけなわの春は、華麗なうたげ展開ひらいていた。
血曼陀羅紙帳武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)