屋形船やかた)” の例文
手持筒てもちづつの二サンチほうぐらいな鉄砲の弾丸たまが、ふいに、屋形船やかたのすぐ側へ落ちた。白い飛沫しぶきが、滝のように、ざっと、屋形の中へまでかかった。
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
奥は秋本荀竜じゅんりゅうの邸になっているが、前はちょっとした丘で雑草の繁るに任せ、岸近くには枝垂しだれ柳が二、三本、上り下りの屋形船やかたとともに
斧四郎旦那は、お喜代だの、露八だの、この前の時の顔に、ほりの芸妓たちを連れて、浜中屋の裏の桟橋さんばし屋形船やかたを着けた。
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
屋形船やかたは、今戸の岸を離れて、大川のまん中へ出た。下流しもへ行くので船頭はをあそばせて、水にまかせていた。
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
猪牙舟につるんで従いて来た一そう屋形船やかたがある。それがいきなりみよしをぶつけて来たかと思うと、猪牙舟の船頭はわざと、勢いよく数右衛門のそばによろけて
濞かみ浪人 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
隅田川から入ってくる猪牙舟ちょき屋形船やかたが夜寒の灯を伏せて漕ぎぬけてゆく。
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ともさない屋形船やかたが一そう、氷をすべるように、大川を下って行った。
無宿人国記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)